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インプラントには、他の歯と見分けがつきにくい、天然の歯と同じような感覚で噛むことができるなど、さまざまなメリットがあります。
しかし一方で、歯周病を発症するケースが多いのも事実です。
インプラント周囲の歯肉は通常の歯の周りに比べると細菌が繁殖しやすく、それが原因で歯周病にかかるリスクが高くなると言われているのです。
本記事では、インプラントによる歯周病の原因や、インプラント治療のリスク、対処法などについて解説します。
メリットの多いインプラントですが、治療を受ける前に知っておかなければならないリスクもあります。
治療を受けてから後悔しないように、どんなリスクが考えられるのか先に理解しておきましょう。
本来くっつくはずのインプラント体と骨が、うまく結合しないことがあります。
インプラントは、歯茎の穴の開いた部分にチタンなどでできたインプラント体を埋め込んで土台を作ります。
結合するまで待つ間を「待機期間」と言い、通常は2~3ヶ月、長くても6ヶ月ほどでインプラント体と骨が一体化しますが、1%ほどの確率で骨が結合しない人がいるのです。
骨が結合しない理由はいくつかあり、患者さん側の原因としてはもともと骨が弱い、噛み込む癖があるなどが代表的です。
一方、診断ミス、埋入位置の間違いなど術者側に原因があるケースもあります。
再度インプラント手術を行うことで、治療を継続できます。
インプラントで最も発生しやすいリスクは、インプラント周囲炎です。
インプラントを埋め込んだ歯肉は、他の歯を支える歯肉よりも弱く、細菌が繁殖しやすい環境になっています。
細菌に感染することで歯肉の周囲に炎症が起き、歯周病を引き起こしてしまうのです。
インプラントの部分が歯周病を起こすと、天然の歯と同じように周りの骨が少しずつ溶けていきます。
最悪の場合はインプラントが脱落してしまう可能性があるため、必ず定期的なメンテナンスを受けましょう。
インプラントは土台部分を骨に埋め込むため、骨が薄い場合は手術ができません。
もともと前歯の骨は他の箇所に比べると薄くできており、そこに歯周病や抜歯による空洞があるとさらに薄くなってしまうため、安定した土台を作ることができないのです。
ところが、骨の状態をよく確認せずにインプラントを行い、トラブルに発展するケースが後を絶ちません。
最近は、インプラント治療を行っている歯医者さんでは歯科用のCTを導入していることが多く、3次元画像で骨密度や骨の厚みを事前に確認できるようになっています。
逆に言えば、それらの設備が整っていない歯医者さんでは、インプラント治療を受けない方がいいでしょう。
インプラントを入れた後、見た目の問題が生じることがあります。
とくに歯肉部分の厚みが少ない前歯にトラブルが起こりやすく、インプラントの金属部分が透けて見えてしまうことがしばしば見られます。
歯茎が黒っぽく映り、せっかく歯をきれいにしても台無しになってしまいます。
また、歯が抜けた部分は骨が痩せやすくなります。
それに伴って歯肉も後退していってしまうため、インプラントの歯だけが長く見えてしまう可能性があります。
金属アレルギーがある人は、インプラント治療を受ける前にパッチテストが必要です。
インプラントに主に使われているチタンは、他の金属に比べるとアレルギー反応が起きにくいと言われていますが、絶対に起きないというわけではありません。
少しでも心配がある方は、必ず歯医者さんで相談しましょう。
糖尿病を患っている人は、スムーズなインプラント治療が難しくなります。
糖尿病では細菌への抵抗力が弱く、手術の傷が治りにくい、歯周病になりやすいなどのリスクがあります。
また、日常的に薬の服用やインスリンの自己注射を行っている場合は、当日のタイミングが難しくなります。
血糖が高いと上記のようなリスクがあり、反対に低いと低血糖症状が出てしまうため、歯科医だけでは判断ができないのです。
インプラント治療を行う前に、入念な治療計画が練られないまま手術を行い、大きなトラブルになることがあります。
上あごにインプラントを埋め込む際に頭蓋骨まで突き抜けてしまい、炎症を起こしたり、下あごに穴を開ける際に神経を傷付けて神経麻痺を起こすケースが実際にあるのです。
CTによる3次元データをもとにしっかりとシミュレーションされていれば防げるミスですが、それを怠ると上記のようなトラブルが起こり得ます。
歯科医の技術不足が原因で、手術が失敗に終わることも考えられます。
今や多くの歯医者さんで行われているインプラント治療ですが、医師の知識や技術には大きな差があります。
大学でインプラントの授業が行われるようになったのはここ数年で、実際は数日間の講習会に出て「インプラント専門医」を名乗っている歯科医も少なからずいます。
確かな技術と経験を持った歯医者さんを見極めることが大切です。
なぜインプラントで歯周病が起こるのか、その原因について詳しくご説明します。
先に述べたように、細菌感染が1番の原因です。
インプラント周囲の歯肉は弱く、どうしても細菌が繁殖しやすくなります。
磨き残しによって歯垢が溜まると、歯周病菌が増殖して骨を溶かしてしまいます。
炎症を放っておくと、菌が血流に乗って全身を巡り、心筋梗塞や脳梗塞の引き金になることもあるため、オーラルケアを徹底しましょう。
歯ぎしりや食いしばりなど、インプラントに過度な力が加わることも、歯周病の原因になります。
歯ぎしりや食いしばりは、歯のエナメル質を削ってしまうほどの力があります。
そのため、インプラントで弱っている歯茎に炎症を起こしてしまうのです。
炎症が進むと歯周組織が破壊され、歯茎の腫れや出血など、歯周病の症状が現れます。
治療で改善させることができるので、歯医者さんに相談しましょう。
インプラントにはリスクがありますが、それらに対する対処法もあります。
しっかりと対策をして、リスクを軽減させましょう。
インプラント治療で最も恐ろしい治療上のミスを避けるためには、安心して任せられる歯医者さんを選ぶことが1番です。
CTを完備し、その画像をもとに歯の状態や手術のリスクまで、丁寧に説明してくれる歯医者さんは信頼できると考えていいでしょう。
ホームページなどで、歯科医の経歴や実績をチェックしておけば、より安心できます。
インプラントも天然の歯とおなじように、日々のオーラルケアが欠かせません。
「どうせ虫歯にはならないから」とケアを怠ると、取り返しのつかないことになるかもしれません。
むしろ、天然の歯よりも手をかけるぐらいが最適です。
とくに難しいことをする必要はありませんが、できれば普通の歯磨きに加えて、オーラルケアグッズを使用すると安心です。
1本ずつ歯を磨くことができるワンタフトブラシや、歯と歯の間の汚れを除去するデンタルフロスなど、さまざまなグッズが販売されているので、歯医者さんで相談してみるのもいいでしょう。
日々のケアと合わせて、定期的に歯医者さんを受診することも大切です。
インプラントの完了後も継続して診察を受けていれば、歯の不具合や歯周病などにもいち早く気付いてもらえます。
どんなトラブルも早期発見であれば治療できるケースがほとんどなので、数ヶ月に1回はメンテナンスを受けましょう。
いかがだったでしょうか。
この記事を読んでいただくことで、インプラント治療のリスクや歯周病になりやすい理由についてご理解いただけたと思います。
確かに歯周病を発症するケースは多いですが、正しいケアをしていればトラブルなく10年以上過ごす人も少なくありません。
リスクやその後のケアについてしっかりと理解した上で、インプラント治療を受けるかどうか検討しましょう。