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インプラントの費用は高いと言われていますが、中でも前歯はとくに高額になります。
その理由は、難易度の高さにあります。
通常、インプラント治療は機能性を重視して行われますが、前歯の場合はそれに加えて見た目の美しさが要求されます。
隣接する歯に馴染ませる、根元の金属を露出させない、自然なボリュームを出すなどさまざまな条件を満たす必要があるのです。
本記事では前歯の役割や重要性、インプラント治療におけるリスクなどを解説していきます。
前歯とは、前から見た時に中心にある上下4本ずつ、計8本の歯のことを指します。
歯にはそれぞれ役割があり、前歯も大切な役割を担っています。
まずは、前歯の役割と万が一失ってしまった際の身体への影響について見ていきましょう。
前歯の最も大きな役割は、食べ物を噛み切ることです。
とくに大きなものや硬いものを食べる時には、前歯がないと自分の口に合ったサイズにカットすることができません。
大きいまま口の中に入ってしまうと、うまく噛み切ることができずに最悪の場合窒息してしまう恐れもあります。
また、食べ物を十分に噛み砕かずに飲み込んでしまうことで消化管にも負担がかかるなど、全身に影響を及ぼします。
前歯は口元の最前部にあることから、見た目にも大きく影響しています。
奥歯が抜けても一見分かりにくいですが、誰が見ても分かる前歯が抜けてしまうと、決して相手にいい印象は与えないでしょう。
前歯の有無は、発音にも影響します。
前歯がなくなってしまうと、そこから空気が漏れてうまく発音できなくなります。
また、タ行やナ行を発音する時には、前歯の裏と舌で音を調節しています。
そのため、前歯を1本でも失うとこれまでのようには話せなくなるのです。
実は、歯の本数と食べられる食材というのは、密接に関係しています。
とくに食べ物を噛み切る前歯がないと、食べられる食材がかなり制限されます。
食の楽しみが減退し、栄養もどんどん偏ってしまうのです。
全身へも影響が出るため、前歯が抜けてしまったらなるべく早く治療を始めることが大切です。
前歯を失ってしまった際は、見た目が美しく耐久性の高いインプラントが最適です。
ここでは、インプラント治療を行う際の流れについてご紹介します。
まずは口腔内の状態をチェックし、治療に関する希望などを伝えます。
インプラントの場合、他に持病があると治療できない可能性もあるため、既往歴や服薬状況などは必ず申告しましょう。
希望に基づいた治療計画について話し合います。
治療期間や費用、リスクなどについても説明があるため、十分に納得した上で治療を決断することが大切です。
インプラントをする前に、虫歯や歯周病などの治療を行います。
複数回要することもありますが、インプラント治療のリスクを減らすためにも術前治療を受けましょう。
局所麻酔をして、インプラント体を顎の骨に埋め込む手術を行います。
通常はアバットメントという部品を仮で装着してその場で仮歯を入れます。
アバットメントが合わない場合は、一旦開いた歯茎を塞ぎ、他の方法で仮歯を固定します。
インプラント体が、周囲の骨と結合するのを待つ期間です。
一般的に、2〜3ヶ月程度かかります。(この期間は仮歯で生活をします。)
再度歯茎を切開してアバットメントを取り付けます。(1次手術でアバットメントを装着した場合は不要です。)
ここまでスムーズに進めば、いよいよ歯の部分の型取りをします。
被せ物の境目がしっかり歯肉に入っているか、歯の並行性に問題はないかなどのチェックを行います。
装着していたアバットメントを外し、人工歯の土台を取り付けます。
その上に人工歯を装着すれば、インプラントの完成です。
インプラント手術後は、定期的なメンテナンスが必要です。
特別に難しいことはなく、清潔な口内環境を保つためのブラッシング指導などがメインとなります。
前歯のインプラント治療には、リスクも伴います。
手術時と手術後に分けて、それぞれ解説します。
まずは、手術時のリスクについて知っておきましょう。
インプラントは、100本に2〜3本の割合でインプラント体と骨がうまく結合しないことがあります。
とくに上顎は骨の硬い部分が薄く、結合するまで下顎よりも時間がかかる人も少なくありません。
どうしても結合しない場合は、インプラントを入れ直すための再手術が行われます。
前歯は、隣接する歯との並行性や傾き、人工歯の大きさや形などが少しでもずれると違和感が出やすくなります。
そのため計画の段階から、綿密な計画とシミュレーションが必要です。
0.1ミリ単位の誤差でも見た目が変わってしまうため、信頼できる歯医者さんで手術することが大前提となります。
骨の厚みが足りない場合も、要注意です。
前歯を支えている骨は、他の部分に比べて厚みが少なく、そこに歯周病を患っていたりすると、さらに薄くなっているケースがあります。
インプラントを埋め込むためには、最低でも5mm必要となり、足りない場合は事前に骨の厚みを増やす外科手術が必要になることがあります。
次に、手術後に考えられるリスクをご紹介します。
手術後に、インプラント周囲炎が起こることがあります。
インプラント周囲炎は、細菌が繁殖したり、強く噛み込むことで生じます。
天然の歯に比べて炎症に対する抵抗力が低いため、一旦周囲炎を起こすと治るまでに時間がかかります。
早期に発見できれば治療で回復できるため、必ず定期的に検診を受けましょう。
インプラント周囲炎が重症化したり、何らかの代謝異常、あるいは喫煙などが引き金となり、インプラントが脱落してしまうことがあります。
万が一脱落してしまった場合は、再手術をすることで回復させることが可能です。
インプラントの手術後、いざ鏡で確認したら想像と違ったということがあり得ます。
とくに前歯の場合は、少しでも周りの歯と色味が違ったり、形が違っていたりすると目立ってしまうものです。
そうした失敗を招かないためにも、事前にしっかりと話し合いましょう。
いかがだったでしょうか。
この記事を読んでいただくことで、前歯のインプラント治療が高額になる理由についてご理解いただけたと思います。
機能性だけでなく審美性も求められる前歯の治療は、手間や時間がかかる分、費用も高くなるのです。
リスクを理解した上で、実績のある歯医者さんで治療を受けましょう。